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自己実現を促進する自己指導能力として身に付けたい!OS的スキル

/「見える学力」と言われ、主に教科学習によって育成されてきた「認知能力」。「見えない学力」と言われ、道徳や特別活動をはじめ学校生活全般によって育成されてきた「非認知能力」。今、この二つの力を体系化して育む教育活動が始まりました。それぞれの学びを統合した能力にするためには、体系化されたスキルが必要です。これまでなかった「自己指導能力」を育むスキルを自分づくりのOSに・・・。

つけたい力と教育方法の大転換

変化の時代にあって、新しい学習指導要領によって、これからの子どもたち(人)につけたい力が明確になりました。それに伴い、日本の学校教育が大きく変わります。

この変化への対応は、学校だけのものではなく、大人や社会人に対しても「学び続けること」として求められるようになると思います。実際、WEBニュースサイトなどでは、これからは学歴ではなく、学習歴が問われるようになる、とか常に最新学歴を更新することが大切であるといったことを耳にするようになりました。

そうした意味でも、学校教育がどのように変わっていくのか、私たちは、今後、どのような力を身につけなければならないのか、について知ることが必要だと思います。今後、20年、30年もすれば、新しい学校教育により育ってきた人たちが、確実に社会の第一線でで活躍する時代になります。学習歴ギャップを埋め、ともに社会で活躍するためにも、現状認識しておきたいものです。

2020年度から始まった学校教育改革の柱は、「知識、技能」、「思考力、判断力、表現力」、「主体的に学びに向かう力、人間性等」の三つの力をバランスよく育むこととされています。

これまで、わが国の学校教育では、「見える学力」といわれる「知識や技能」を学力の中心として捉え、その習熟に力を入れてきました。しかし、これからは「思考力、判断力、表現力」や「主体的に学びに向かう力、人間性等」の「見えない学力」をカリキュラム全体で育成することに力が注がれるようになります。

この見えない学力は「非認知能力」といって、意欲・忍耐力(やり抜く力)・自制心・社会性・協調性など、社会的成功に結びつきやすい力といわれます。

そこで、このような力を育むことを目的とするため、教育活動を次のような活動として大きく変えていくこととなります。
・やる気や意欲を湧かせる活動
・好奇心や挑戦心を喚起する活動
・没頭して粘り強く頑張る活動
・他者と協働して解決する活動
・主体的に進んで参画できる活動

これらの活動を通じて、「見える学力」も重視しながら、「見えない学力」の育成にエネルギーを注いでいくこととなります。

このように、学校教育が積み上げてきた教育方法を大転換する時を迎えることになりました。

探究の必要性

学校によってはすでに始まっていますが、変化が激しく予測困難な社会に対応し、自分らしい生き方を選択して幸せに生きていくためには、「探究」する力を子ども時代から身につけていく必要があります。

正解を暗記する勉強方法ではなく、自ら問いを立てて、課題を解決するために、情報を収集し、みんなで意見を出し合い、解決へと導く能力を育んでいく探究学習を経験していかねばなりません。

これによって、激しい変化への対応として、ものごとを自分事として捉え、自ら問いを立てて情報を集め、考え、行動するというサイクルをまわしていかねばなりません。

「原田メソッド」の成り立ち

TIEON教育が活用している「原田メソッド」は、元中学校教師の原田隆史氏がつくった実践的な方法で、「ツールの活用によって“能力”と“人格”をともに高めながら、目標達成を実現する」方法です。

とても優れた方法で、現在、数々の実績を世の中で実現し、世界各国にも広がりを見せている精度の高い教育方法だと思います。

原田氏は、当時、中学校部活動(陸上部)の世界で日本一といわれる学校や優秀な企業経営者、さらにオリンピックメダリストなど、成功者やハイパフォーマーを徹底的に研究し、以下の共通性を見いだしました。
①目的や目標を達成した未来のイメージを鮮明に描いていた。
②「必ずできる、やり遂げる」という強い意志、「敵は自分」という勝利意識を持ってい
た。
③成功につながる行動を考え、それを毎日欠かさず繰り返すことにより、成功のため
の習慣形成を行っていた。
④成功の最小単位を「一日」とし、毎日を丁寧に振り返りながら日々の積み重ねを行っ
ていた。
⑤一つの側面に偏らず、「心」「スキル」「心身の健康」「生活」のバランスを大切にして
いた。
原田氏は、これらの条件を満たすための方法を考え、体系化することができれば、誰でも自らの目的や目標を確実に達成できるようになると考えました。

そして、陸上指導を通して実践と研究を重ねながら、考え方、やり方、ツールがすべて揃った「原田メソッド」をつくりあげました。

「原田メソッド」の仕組み

 「原田メソッド」には、成功者やハイパフォーマーに共通する要素を再現する考え方、方法、そして5つのツールがあります。

具体的には、次の通りです。
1⃣自分にとって価値ある目的や目標をつくる方法。→ 「未来をつくる4観点」
2⃣目的や目標を達成するために必要な行動をつくる方法。→「オープンウィンドウ64」
3⃣行動を実践するためのシナリオ、ストーリー。→「長期目的目標設定用紙」
4⃣行動を習慣化するための方法。→「ルーティンチェック表」
5⃣日々を振り返り、一日を充実させるための方法。→「日誌」

これら5つのツールを使うことで、
①目的や目標の設定
②行動づくり
③行動計画
④実践による習慣化
⑤一日の振り返り
にわたる一連のセルフマネジメントが実施できます。

そして、この方法の価値は、
・再現性が高いこと。
・哲学(考え方)とツールがセットになっていること。
・「技術」として身につくこと。
・必ず結果につながること。
があげられます。

自分をマネジメントする力が大切

「原田メソッド」は、自分自身をマネジメントする優れた方法です。ところがこれまで、学校教育の現場では、個人をマネジメントする体系的な方法は、広く知れ渡るほど実践されていなかったのではないかと思います。

したがって、初めて原田隆史氏にお目にかかり、直接「原田メソッド」のことを聞いたときの感動は大きなものでした。これを活用すれば、これから学教教育が目指すべき人間を育てることができる・・・と思いました。

「原田メソッド」を習得し、その後、新たに湧き上がる課題や疑問を解決していく中で、「原田メソッド」を活用した体系的な教育方法が、以下の3点に適するものになることを確信しました。

1.「自己指導能力」の育成につながること
2010年に文部科学省が発刊した「生徒指導提要」の中に、「生徒指導」の意義は、自己実現を図って行くための自己指導能力の育成を目指すということが書かれています。

つまり、「自らを自らで指導する力」を育成することが自己実現を図ることになり、学校教育で行う生徒指導の意義であるということです。

この「自己指導能力」を身につけることは、自分で自分をマネジメントする力を身につけることと考えることができます。したがって、「原田メソッド」はそういう意味でも活用可能であると言えます。

2.「非認知能力」の育成につながること
知識や技能の習得だけではなく、思考力や判断力、表現力等、さらには他者と協働して問題や課題を解決する力、学び続ける力、人間性等を身につけ、育成することが大切になります。

そこで、注目されているのが知識や技能などの認知能力とは異なる「非認知能力」の重要性です。「非認知能力」は、社会で通用する力、社会で成功する力と言われていますが、具体的には、意欲、忍耐力、やり抜く力、自制心、メタ認知、社会性等々、社会で生きるために人として必要な資質、能力です。

2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授が提唱して急速に注目されている考え方です。ヘックマン教授は、この「非認知能力」を身につけるために有効なことの一つとして、「目標」→「計画」→「実践」→「復習・改善」のサイクルが大切であるとしています。

したがって、「原田メソッド」の体系と重なるところが大きく、「原田メソッド」の活用は、非認知能力を育成する上でも効果的であると思われます。

3.「人間力」の育成につながること
2003年に発表された「人間力戦略研究会報告書」によると、人間力とは、「社会を構成し運営するとともに、自律した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」とされています。

そして、「人間力」を高めるためには
◎基礎学力や専門知識・ノウハウ、論理的思考などの「知的能力的要素」
◎コミュニケーションスキルやリーダーシップ、公共心や相互啓発力などの「社会・対人関係力的要素」
◎意欲や忍耐力、自分らしい生き方を追求する力などの「自己制御的要素」
以上、3つの要素を育成することが必要であるとしています。

これら3つの要素のうち、「自己制御的要素」を身につけるためは、「原田メソッド」は効果を発揮すると考えます。

このように「原田メソッド」を活用した体系的な教育方法が、これからの人間力育成にあたって、とても大切な教育方法になることが理解できると思います。

これから必要なOS力

教育の目的は、「人格の完成」と「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」を育成することであると教育基本法で示されていますが、学校教育に期待される人間の在り方として、次のようなことが求められています。

☆理想を実現しようとする高い志や意欲を持って、個性や能力を生かしながら、何が重要かを主体的に判断できる人間。
☆自分の考え等を根拠とともに明確に説明しながら、対話や議論を通じて多様な相手の考えを理解したり自分の考えを広げたりし、多様な人々と協働していくことができる人間。
☆自ら問いを立てて、解決方法を探索して計画を実行し、問題を解決に導き新たな価値を創造していくとともに新たな問題の発見・解決につなげていくことのできる人間。

そのために必要な資質や能力が、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」という三つの要素とされています。

そして、この三つの要素を育成するためにどのようなことが重要であるかについて、文部科学省が公開している「新しい学習指導要領等の在り方について」をもとに考えてみました。

以下の通りです。
・育成すべき資質や能力を整理すること
・具体的な学びの姿をイメージして構成すること
・教育課程全体を構造化すること
・問題発見・解決のためのマネジメントを循環させること
・学びに向かう力や人間性等を育成するための教育と教師の関わり方が重要
・自己の感情や行動を統制する能力や、よりよい生活や人間関係を自主的に形成する態度等、「社会を生き抜く力」を育むこと
・構造化するスキルが必要

これらにより、次のようなスキルや技能等が、必要であると感じました。
①定義や概念、目的や目標を具体的に分解し、行動や計画に落とし込み、もれなく、無駄なく実践につなぐことができる構造化できるスキル・技能。
②問題を発見し、その問題を定義し解決の方向性を決定し、解決方法を探して計画を立て、結果を予測しながら実行し、プロセスを振り返って次の問題発見・解決につなげていくためのマネジメント力
③学びに向かう力や統制する能力等の「メタ認知」。協働する力やリーダーシップ、チームワーク、感性、優しさ、思いやりなどの人間性を育むことができる方法
④自己を統制し、よりよい生活や人間関係を自主的に形成する態度等ともいえる「社会を生き抜く力」につながる方法
こうしたことから見ても、「原田メソッド」の仕組みや「個を高めるマネジメントサイクル」をスキル・技能として身に付けることが、学校教育にとっても、社会人(人材)教育にとっても、とても有効であると思います。

したがって、これからの人間に身に付けたいOS的なスキル・技能になり得るものになると思います。

これからの教師の役割

生徒指導提要で示された育成したい力である「自己指導能力」。これは、「大人が子どもを教育する」というのではなく、「子どもが望ましい大人になる」という子どもを主体にした教育観によって考えられた言葉です。

そしてこの「自己指導能力」は、
①自分らしく生きる自己実現に向けて必要であることが何かを考える力
②自他の双方を尊重して行動の適切性を判断する力
③自分で決めた事を実行する力
を統合した力であるとされます。

この力を身に付けることで、子どもたちは、自己実現に向けた行動を発展させたり、改善したりすることができるようになります。また、このような行動の発展と修正の積み重ねを継続させることで、生涯にわたって自分らしく生きることができるようになります。

このような営みを子どもたち自身が自ら行うことで、自発性、自主的、自律性、主体性を育んでいけるようにすることが、教師の役割になります。

そこで指導者である教師として留意しなければならないことは、次の三つのことであるとされます。
・自己存在感を与えること
・共感的な人間関係を育成すること
・自己決定の場を与えること
自分は価値のある存在であるという実感や十把一絡げではなく、一人の個性ある人間として認められ、尊重されているという感情。ありのままに自分を語り、共感的に理解し合う人間関係。自分や自分たちで考え、決めて、実行する場の保障。
このようなことを教師が、十分に配慮し、尊重する態度をもって接することでとても重要なこととなります。

これからの教師は、よりよいファシリテーターのような役割が必要であると言われます。教師自身が、教育観の転換を自らのものにしながら、「自己指導能力」が子どもたちの「社会を生き抜く力」となって育まれるようサポートする時代になったのではないかと思います。

授業のイメージ

具体的に授業の大まかなイメージを考えてみると、次のような授業を実践していくことが大切になると思います。

まずは、授業のプロセスを大切にし、次のようなことを行いたい。
1 授業プロセス
 ①主題に対して自分なりの意味づけをする。(動機付け)
 ②問題意識を生じさせる。(目的・目標の設定)
 ③必要となる知識や技能を獲得する。(習得)
 ④問題解決に向けた学習活動。(対話等協働的活動)
 ⑤振り返り(評価・次の学習)
さらに、学びに向かう力や人間性や人間性等を育むために、次のような点を考慮したい。

2 対話的、協働的な学習
 ①対話を通じて他者の考え方を吟味して取り込む
 ②自分の考え方を広げる
 ③人間性豊かなものに高める

3 思考力・判断力・表現力等を育成するために、次の点に留意したい。
 各教科等の目的や意義を考え、その特性に応じた学習として
 ・問題を発見し、解決の方向性を決定し
 ・解決方法を探して計画を立て
 ・結果を予測しながら実行し
 ・プロセスを振り返って次の問題発見・解決につなげていく。
これまでに経験し得なかった授業のイメージです。具体的に授業をイメージしながら創り、実践を通してより良いものにする。この試行錯誤を重ねること、厭わないことが教師として最も大切であると思います。

自己指導能力育成サイクル

この当たり前の完全サイクルをマネジメントできるようになると、個々の人生は大化けすると思います。

特別なことではないように思えますが、この地味で当たり前なことを本気でやっている人は、実はほんの一握りの人かもしれません。個人も組織も同じです。自発的で、自主的で、自律的で、主体的に持てる力を発揮できるようになるために、この完全サイクルをまわす「コツ」と「習慣」を形成することが有効です。

学校で、会社で、組織で、家庭で、チームで・・・人生100年時代、いつか、どこかで身に付けておきたい「社会で能力発揮できるOS的スキル」となります。

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